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2012年2月13日 (月)

【DA2】イーヴィル・パスについて

 私の読書スタイルはサーチ・アンド・デストロイ、対潜哨戒行動のようなもんです。
 そこらじゅうにソナーブイびしばしばら撒いておいて、いざ何かがひっかかったら敵潜水艦の撃沈(または誤反応)が確認できるまで延々とそこに居座る。

 最近はやっぱ大澤真幸氏方面に居座っていて縦掘りしまくっている感じ。
 私の「最近」ってのはDA2英語版リリース以降ということで、つまり11.3.11以降ということです。

 これは先に書かれているかな? アンダース(Anders)はドイツ語の男子名でアンデルスですが、andersで特異な、ほか、別などの意味があるそうだ。

 大澤氏の編著、「3.11後の思想家25」なる本は、ご本人はほとんど書かれていないことはわかっていたが、USBメモリ一本だけAmazon.co.jpから注文すると巨大な段ボール箱で来る(ヤマト運輸が99%空気を運ぶ)のがなんともあれなので、あわせて買った。 

 やっぱりご本人はほとんど書かれていない。まえがきと、担当されたふたりの思想家(ひとりは見田宗介、もうひとりがジャン=ピエール・デゥピュイ!Jean Pierre Dupuy、デュプイDuPuisではなかったか)の部分を読んで、期待通りとても興味深い内容だったのですが、とりあえずオシマイ。25人中2人でオシマイ(サーチ・アンド・デストロイですから。潜水艦いないところを探してもしょうがない)。

 と思ったんですが、デゥピュイのところでギュンター・アンデルスが引用されていて、今度はそのアンデルスの部分(大澤氏ではない人が書いた)を読んだ。中身も面白かったが、そこでアンデルスが「ペンネーム」であり、上のような意味であることを知ったのです。なんだろう。「自分じゃない誰か」って意味かな。

 それだけ。 

 な、わけはなくて、もちろん中身に触れます。

 大澤氏が前から主張しているのが、時代は、現実からの逃避(例えば「理想」の追求であったり「虚構」への没入であったり)ではなく、現実への逃避になっているのではないかということ。

 現実への逃避って、一体何から逃げているんだよ、というと、これは無意識。夢などで垣間見られる本当の自分(であるはずの姿)ですね。

 大澤氏は、フロイトの記したある男の夢を引いて、凡庸な解釈が真実を覆い隠すことを示します。夢の内容は次のようなものですが、だいぶはしょってます。

 男は父親でしたが、息子は最近亡くなりました。その遺体を安置している場所が見えるところで男はうたた寝をしてしまう。夢の中に亡くなった息子が出てきて「僕がやけどをしていることがなぜわからないの?」と男を糾弾する。慌てて飛び起きると、灯してあったロウソクが倒れて息子の遺体に着せた衣服が燃えていたのでした。

 凡庸な解釈は、例えば目覚まし時計のベルが夢の中では電話の音に変換されるように、夢にはとりあえず眠りを継続させようとする作用がある、というものです。外の世界の音が、夢の中で矛盾がない(ように思われる)形で登場することで睡眠がもうしばらく続く。
 

 大澤氏がより説得力を覚えるというラカンの解釈は、夢が男を覚醒へと追いやっているというもの。上のような種類の激しい内容の夢は現実への逃避を催促している。

 ラカンによれば、男は息子の死になんらかの罪の意識を抱いていたのだろうという。その罪悪感が「責めるこども」の形として夢に登場した。だから男は慌てて覚醒してしまうのではなく、もっと長く夢の中に留まり、自分自身と対面していれば、その罪悪感の正体を見極められたかもしれないという。 

 自分がRPG、特にBioWareゲームでイーヴィル・パス、邪悪な筋道をなかなか選べないのは、ひとつには継続性を愉しむチャンスがてんこもりの作品なのに、ある物語で殺されたキャラクターは続編に出てこなくなるので困る、というメタ・フィクション的な理由もあるでしょう。
 でも、それとは別に、上の夢の話に関係したあたりにも理由がありそうです。  

 DA2には明らかなイーヴィル・パスはないと思います。イーヴィルなNPCキャラクターは登場してきます(オシノでもメレディスでもありません)が、主人公、コンパニオンが明らかに邪悪な振る舞いをする、という展開はない。
 いや、あるじゃないか、あれとか、これとか。反論がありそうですが、そういう議論は「邪悪」とは何かを定義していないから堂々巡りになります。そして私は堂々巡りが大好きである。だって答えが出ないものについては延々と堂々巡りしているほうが安全じゃないですか。こんな議論には意味がないといって交渉決裂してしまったら、核ミサイルのボタンを押しちゃうかもしれないじゃないですか。

(DA2、オシノとメレディスがサークル前で口論しているとき、オシノは最後にこう言います。
"This is getting us nowhere."、「これ以上議論してもどもこもならん」ですね。堂々巡りだといっています。ただし彼はエルシナの調停を求めていた。あのとき核ミサイルを発射するつもりはなかったんですね。実はエルシナの態度についても、同じ本からネタを得たのですがまた別の機会に) 

 だからここでも定義しません、というかできません。できるといっていたらそれは新興宗教家か詐欺師、あるいはその両方です。でも例示を列挙はできます。日本の刑法が「これこれしたら刑罰はこれ」と記載してあるように(もちろん、あっちは例示ではなく網羅的ですけど)。ポップクイズ。刑法は誰を縛っているでしょう? 国民? ぶぶーっ。裁判官ですね。あそこに書いてある以外の罰を与えてはいけないわけですから。日本の場合、「汝人を殺すべからず」は、何の法律にもどこにも書いてない。正しいか? 
 

 Skyrimのブラザーフッド・プロット。まだ試してもいません。ずーっと後回し。あれは入り口がすでに「邪悪」だからです。

 BioWareでも、Bethesdaでも開発者の多くは、DnDあるいはDnDにインスパイアされた作品群から影響を受けている。(こうしたRPGメーカーに限らない広い範囲の)プロのゲーム開発者が選ぶ名作のトップにBaldur's Gate IIがいつまでも残っていることからもわかります。

 DnDの世界のアサシンはイニシエーション(通過儀礼)を行う必要があります。「アサシンギルドに入るため、特に意味もなく、自分と何の関係もない対象を殺す」ことが必要です。

Requirements

To qualify to become an assassin, a character must fulfill all the following criteria.
1. Alignment: Any evil. (悪のキャラクターであること)
2. Skills: Disguise 4 ranks, Hide 8 ranks, Move Silently 8 ranks. (DnDのスキルシステム)
3. Special: The character must kill someone for no other reason than to join the assassins.

 Skyrimのブラザーフッドのプロットは「事後的に」ですが、もろそのままですね。MorrowindのブラザーフッドはエキスパンションのTribunalで初登場のようだ。Morrowind本編にもアサシンが登場した(主人公がアサシンとして振舞える)はずだがあれはブラザーフッドではなかったのか。

 それからMass Effect 2では若い(っても100歳くらい)アサリが同じような手続きを踏んで暗黒街のシンジケートに認められようとしている様子も描かれていました。ノリはすっかり同じです。ちなみにME2にはNPCに「本当の意味で邪悪」なやつ一杯出てきます。その意味でも最高です。 

 DA:Oのゼヴランは物心ついた頃にはもうアサシン・ギルドに引き取られ、「訓練」されてきたアサシンである。ここにもまた定義が難しい理由が出てきます。ゼヴランは邪悪なのか。その行いだけ見れば他のアサシンと変わらないのですが、動機づけは「物心ついた頃から訓練されたから」、「うまくできるから」。であれば浅田真央は邪悪ということになる。なあほな。いや、同じことだ。 

 そういう頭の痒くなりそうなテーマを扱うことになるので、初期のDnDでは、逃げ道、安全弁を用意していました。私がやっているのと一緒で、普遍的な定義はできないから「例示」するのです。

 悪魔崇拝(DnDにはディーモンとデヴィルがいます)、ネクロマンシー(ヴァンパイアリズムも当然入ります)、奴隷商など。こういったものを絶対的な「悪」と規定することです。DnDパラディンが認めてはならない(認めない、ではないことに注意。自らの死を賭してでも阻止しなければならない)三大悪。
 DnDを知らない方はME2のアサリ・ジャスティカーを想起すればよい。あれがカンペキなパラディンの姿です。
 そしてお気づきのように、この三つですら共通の定義づけなんてできっこないわけです。

 DA:Oでは比較的単純で、ディーモン崇拝(ネクロマンシーはこっちに入るかな)や奴隷商は普通に「悪」の扱いであった。アーチディーモン打倒のほうが重要だしね。
 ところがDA2では、またひとひねりして難しい問題をさらにややこしくした。アンダースのように、悪魔崇拝という意図からではなく、スピリットの憑依を受け入れた存在が登場する。DA:Oでもウィンのようにスピリットに憑依された存在はいましたが、あっちは現世には消極的な、ウィン以外には無関心なスピリットであったようだ。しかもウィンが望んだわけではない。

 アンダースに憑依したスピリット、ジャスティスは、正義が履行されない事態を決して見逃してはならない。DnDパラディンと同じで「見逃さない」ではない。難しく言うと「定言命法」、前提を排除した無条件の行為のことをいいます。「妥協なんてもとから存在しないんだよ」です。
 

 ここでスピリットならよくてディーモンはだめという「凡庸な解釈」も崩壊する。形式的な違いはあるけど、実はアンダースとメリルの間に、さほど違いはありませんからね。 

 こういうテーマだけでもうんうん唸らなければならないのに、なんで敢えて悲惨な結末を選ぶの?

 現実がどうしようもなく邪悪で汚らしいから、理想そして/あるいは虚構であるゲームに逃避してるんじゃないんですね。理想そして/あるいは虚構であるはずのゲームを遊んでいるのに、そこでどうしようもない自分自身の現実の姿に気がつくのがきっとイヤなんでしょう。
 どんな姿かわからないけど。

 さらに言えば、理想そして/あるいは虚構であるはずのゲームに「リアリティ」を求める倒錯。

 現実はどうしようもなく邪悪で汚らしいわけではありません。ただメチャクチャなだけですね。その意味では不条理で残酷。  

**********

 カート・ヴォネガットの「国のない男」("A Man Without a Country")の冒頭のフレーズを再掲。

"There is no reason good can't triumph over evil, if only angels will get organized along the lines of the Mafia." (KVの署名)  

 訳者の訳。

 「善が悪に勝てないこともない。
  ただ、そのためには天使が
  マフィアなみに組織化される必要がある。」

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