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2012年5月 6日 (日)

Valve組織論(2)

 前記事からの続き。IGNのつけた表題は、"The Future of Game Development"だが、ほとんど組織論だけを語っている。

http://games.ign.com/articles/122/1224290p1.html

 全部は訳さない。要点だけピックアップしよう。

「ハイエラルキー(ヒエラルキー、階層型組織)は、マネージャーの専制権(managerial dictatorships)を担保するためにデザインされている。マネージャーはその定義上、生産活動を行わない。組織の他の者たちが組織の要請に応じて生産活動を行うように仕向けるのが役割である。多くの組織では、そうしたマネージャーの役割は必要であり望ましい。 

 だがValveの理念によればマネージャーは不要である。Valveは、マネージャーによって統制される必要のないほど、極めて優れた人々を雇うことを追求しているからだ」

 IGNによれば、Valveはこの記事の取材自体に協力することを拒んだという。まず前記事で触れたように、ことの発端が門外不出のValveの従業員マニュアルの流出であることもそういう態度の理由としてあろうだろう。だが、こういった(門外漢が上っ面だけをなぞりかねず、結果として自分が超越的に見えてしまう)議論に参加しないこと自体、実はValve、ニューウェルの賢さを示しているのだと思う。 

 仕方がないのでIGNはBloomberg BusinessWeekにおけるニューウェルのインタヴュー記事の発言を引用している。

http://www.businessweek.com/articles/2012-04-27/why-there-are-no-bosses-at-valve

「マネージャーは組織化された手続きの遂行には向いているが、われわれのような仕事にとっては必ずしも向いているとはいえない。ある製品世代を創作するために求められるスキル群が、他の製品世代の創作では無意味になることがしばしばある。われわれの業界はそうしたテクノロジカルな、デザイン面の、アーティスティックなことがらの絶え間ない変化(flux)に曝されており、われわれが求めているのはそういう事態を把握できる者たちなんだ。ひとりの者が連続したふたつのプロジェクトのリーダーを続けて行うケースは極めて稀だ」

 Valveの各担当チームのリーダーたちは志願制のマネージャーであるが、引き受けてみたら大変な苦行であることに気がつくこともしばしばだ。

「他の者たちをより生産的にしようと手助けすると・・・、自分の生産性を損なってしまう。マネージャーはより高度のストレスを伴う仕事であるし、自分の仕事はますます中断されるようになる。あるひとつのプロジェクトならそれに耐えられるだろう。誰かが『このゲームは本気で作りたい』と志願すると、周りの皆が『ははは、もはや逃げられんぞ」と笑うんだ。その志願した者もプロジェクトが終わった頃には、『ああ、これは本当に面白かったが、次は個人でやる仕事に戻りたいね』と言うだろう。われわれの会社でもっとも報酬の高い者たちは、どちらかというと純粋に個人の作業で貢献している者たちなんだよ」

「正しい資質の持ち主が必要なんだ(You need the right people.)。一番賃金の安い者たちを探すんじゃなくて、よく内輪の冗談で言っているんだが、われわれは一番賃金の高い者たちを求めている。(採用された者がValveという会社に慣れるまで)だいたい6ヶ月はかかる。一番適応に時間がかかるのが映画産業からきた者たちだ。あそこは組織構造が驚くほど専門化(細分化)されている業界だからね。例えばアニメーターとして仕事をはじめたとしたら、映画に登場する喋る動物の唇の動きのアニメーションだけを何ヶ月も作り続けることで名をはせるようになる。そういう人をここに連れてきたら、事態が変わったことに気がつかせるまでしばらくかかるんだよ。『なんだよ、もう唇の動きだけ描き続けなくてもいいのか』ってね」 

 次はIGNの記者の所見である。記事のテーマに即しているので訳するが、言っているのはわりと普通のことです。

「今日の就業者たち(workers)は、とりわけ若い世代は、マネージャーたちの設定した評価基準ではなく、その仕事で受ける得失(merits)と、同僚たちの意見によって(自分の仕事の良し悪しを)判断することを好む。今は困難な経済状況の時代にあるので、就業競争は厳しい。だがもっとも貴重な類の就業者を獲得するための企業間の競争は常にあり、クリエイティヴな仕事に就く者にとって、行動の自由は給料、肩書き、あるいは余禄(benefits)などと同様に、重要な誘引材料になってきている」

 次はUnreal EngineのEpicの社長であるMike Cappsが登場。私はとたんに興味が減衰したので「あとは読んでみたら」と言いたいけど、それも冷たいので発言はなぞることにして、あとは要点だけ。

「人々のクリエイティヴな衝動を解放すること(の重要性)についてはいろいろ言われているよね。われわれもできるだけそうしようとしている。そこがほとんどのクールなアイデアの出所だからね。ここの者たちはゲームをつくり、それをユーザーに届けることに情熱を賭けているから、その助けになる限りにおいて、誰がピザ屋に注文の電話をするかなんて、ぜんぜん気にしないよ。ピザを注文しろと誰かに言われるからどうのこうのではなく、誰かが注文しなければならないなら自分でやるべきだと気がつくかどうかが大事という意味だけどね」

 Epicでは、一時期流行って今でも実践する会社の多い「自律型(自治型)作業チーム」を本格的に導入しているようです。

「われわれは小さなグループで編成されたチームの自治性をとても重んじている。チームには日々のスケジュールなど必要ない。今日なにをする必要があるか皆わかっているから。スタジオ・レベルの上層部でどういうゲームを作るか方針を決めたら、あとは個々人がどうすればうまくいくか日々考えるんだ。Valveに比べたら、われわれは(旧来のハイエラルキーとValue型の)ハイブリッド組織だろうね」 

 Cobbsにとって、Valveのようなマネージャーの欠如した組織は、ちょっと無茶かもしれないと感じるそうだ。
 Epicも大企業になってしまったから、昔に比べれば新しい従業員が彼(社長)のオフィスにずかずか入ってきて文句を言うことは減ってきた。だからその(社長に文句を言える)手順は用意するべきだろうという。
 Valveの組織では、(組織内の)問題の発見とその解決が苦手であることはニューウェルも認めている。

「(完璧な組織なんてないから)Valveの組織が看板どおりに運用されているかどうか疑う向きは常にあるが、そこは重要ではない。どこに向かおうとしているかがわかっていればいい。Epicでも毎日われわれの企業理念を全部実現してるなんて思っていないよ。だがそれに向けて努力していることがわかっていればいい」

 たぶん、皆さんもEpicの社長の話のほうに共感するんではないか。わりと穏健な発想ですし、繰り返しますが、組織の形成はそのおかれた環境、製品・サービスなどにもよると教科書には書いてあるが、トップ個人(の発想やもっと言えば人柄)によって大きく変わる。これは教科書には書いていない。

 もし変わらないのであれば、実はそれは死んだ組織、腐敗した組織である。官僚制組織の行き着くところだ。それではまわらないので、非公式なチャネルや個人的な人脈の活用、あるいは権限の捏造、賄賂・バーターとか、掟破りなことがらが日常茶飯事になっていってますます腐敗していく。まあ・・・、実例をあげるのはやめておきましょうね。

 まだ続きます。

 

 

 

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