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2012年7月14日 (土)

Valve、EAのSteam批判に反論する。

 EAのSteamに対する難癖は、あまり理屈が通ってなくて、ちょっと見苦しい気もしますがGameSpotによれば、次のようなものだそうです。

 「Steamの過激なディスカウント商法は、ゲーム業界が必死に築き上げた知財(IP)の価値を貶め台無しにしている(cheapen)」

http://www.gamespot.com/news/valve-responds-to-steam-sales-criticism-6386601

発言者は、EAのOriginを担当するDeMartini副社長(VP)。

 Originは、すでに11百万の顧客を獲得しているそうで、ヴィデオゲームのデジタル・ディストリビューション分野ではトップ独走のSteam(40百万ユーザー)を追撃中。

 EAの2012年3月末までの会計年度(FY12)について発表したファイナンシャル・ステイトメントによれば、同社は「翌年度中(FY13、つまり今)には伝統的なゲーム会社とは似ても似つかない姿に変貌し、団子レースの群れから躍り出て、デジタル分野のどの競合相手も追いつけないくらい一気に引き離す」ときわめて威勢がよい。

"In the coming year, we break away from the pack, with a very different profile than the traditional game companies and capabilities that none of our new digital competitors can match."

http://investor.ea.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=671113 

 EAはFY12の純収入42億USDのうち、デジタル分野で12億USDをあげている(対前年47%上昇)。(数字はすべてnon-GAAP basis、以下同じ)

 EAのFY12Q4(2012年1月から3月の四半期)には、フルゲームのデジタル販売が、前年同四半期に対して76%上昇し、同四半期60百万USDの純収入をあげた。その一部はMass Effect 3とSWTORの牽引によるものである。

 "On a non-GAAP basis"というのは、US会計基準(GAAP)との整合性が確保されていない数字という意味で、企業独自の計算方法に基づくものという程度の意味です。それすら公表ルールが定められているので、「企業が都合よく計算した数字」という意味ではありません。ゲーム業界は特に出荷/売上げの分野で複雑なルールが多いですから、独自の会計計算が必要になるのでしょう。

 純収入(net revenue)は、売上げから製品原価を引き(これが粗利、gross revenue)、さらにその他もろもろのコスト(コミッション、リファンド、減価償却、税など含む)を差し引いたもの。企業の最終的な儲けを示すもの(配当前)で、よく"bottom line"といわれるように、通常は収支表(P/S)の一番下に書かれる。net profitとも、net incomeとも呼ばれるときがある。

 ところがデジタル商法の世界ではすでに団子レースから一歩抜け出しているのがSteam/Valveであるわけだから、EAのデジタル分野の責任者がSteam商法を批判する舌鋒も鋭くなるわけです。仮想敵どころか「宿敵」そのものとみなしている。  

 Steam/Valveが珍しく反応している。ValveのHoltman(この会社はNewellだけじゃなく、誰も肩書きがないようだ)によれば・・・。 

 「(ある価格帯で提供してみたが)売上げが思わしくないのであれば、(パートナー)企業はいつまでもその価格に固執しない」わけだし、「プレイヤーに新しいIPを提示するためには、何はともあれ、まず売らなければならない」 

 つまりプレイヤーの知らないもの、手にしてもいないものの価値について論じても意味がない。 

 よく批判される、やがて行われるだろうディスカウントを期待してプレイヤーが新発売時期に買い控える行動を誘発する(将来のディスカウント期待がリリース直後の売上げに打撃を与える)可能性については、「ファンであれば新発売で買うだろう。なぜならファンなんだから」

 そしてそもそもそのIP(フランチャイズ、シリーズ)のファンになるためには「まず手に入れて(買って)遊んでみなければならない」 

 ロジックはValveのほうがカンペキ勝っているんですよね・・・。 

 実は問題の本質は、Steamのディスカウント商法そのものではない。EAにしたって苦労してOriginを立ち上げ、案の定今ぐだぐだになっている運営をぼろかす批判されてまで、ディスカウント商法にこだわっているわけじゃない。それだけならあんな複雑なサイトはいらない。

 表面上は、Steamの厳しいコンテンツ・アップグレード管理基準を嫌ったことがEAのSteam離脱の理由にされているが、ま、ただのこじつけ、言い訳でしょう。   

 単純にSteam/Valveが要求するマージンをEAが合理化できるかどうか(仲介業者のコミッション・フィーの一種として納得できるかどうか)が論点だったはずで、それがまずひとつ。でもこれだって歩み寄れたはずなんだ。

 もっと重要なことは、そうしたディスカウント、バンドルなどのプロモーションでプレイヤーがどのように反応するか(しないか)、またプレイヤーがどのようにゲームを遊ぶか(選ぶか)、そういうプレイヤーの挙動に関するデータをSteamがおそらく囲い込んでいること。

 デジタルの覇者を目指すEAにとって、ゲーマーの挙動についての知見を有しないのは致命的だ。Steam以外のデジタル販売が、たとえばD2Dなどがほぼ壊滅しているのも根本的にはそこに問題があったのだ。

 PC/Mac専業でかつ、ヴェンダーから中立であるSteamとは土俵が違うが、Steamと同様に賢い連中が頭が割れるくらい考えているMSのXLIVEが追従しているくらい。(Amazonがまじめに取り組めば戦えるかもしれないけど、Steam、XLIVEはもうかなり先行してしまった)

 なぜなら、単純に販売価格の問題であれば、D2DだっていくらでもSteamをミミック、模倣できたし、現にしていたのだから。だってSteamはプロモーションもディスカウントも手の内を世界中にあけすけに見せているんだから!(ユーザーによって一切差別していない、という意味) 

 そういう手の内が「なぜ」成立するのか、そうした知見はもちろん模倣できない。

 また、そういう手の内(プロモーション)をパートナー企業(つまりヴェンダー、ゲームメーカー)に受諾させる、信頼されるための裏づけとなるデータを持っていなければ、容易に同意を得られない。

 そしてその手の知見を手に入れるためには長い時間がかかる。まさにNewellのいう試行錯誤の連続でしか手に入らない。 

 EAとSteamの間で行われているのは、そういう種類の戦いなんですね。

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