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2012年8月17日 (金)

EAが身売り?

 Vivendi が61%保有するActivisionBlizzardの株式を売りたがっているのは、自らの低迷している株価がコングロマリット・ディスカウント(注)によるものであるという批判に対する対応もあるでしょう。

 Vivendiのマーケット・ヴァリューは、175億EUR(220億USD)。経営層が見込むActivisionBlizzardのマーケット・ヴァリューは、Vivendiの匿名筋によれば130億USDと見込まれている。(足元マーケット・ベースで計算すると80億USDだそうだ。そのギャップが交渉代(しろ))

http://www.bloomberg.com/news/2012-06-07/vivendi-said-to-discuss-activision-unit-sale-on-june-22.html

(注)多様なビジネスを保有するコングロマリットの個々の事業の動向が外部から見通しにくいため、各事業の価値が市場から「保守的」に低めに見積もられ、その総和であるコングロマリットの価値も低く見積もられること。つまり当該事業はコングロマリットの傘下にいないほうが価値が高いはずである、とみなされる状態。
 コングロマリット側(親会社側)の当該事業分野に対するエクスパティーズのなさを理由にする説明もありますが、一番大きな理由はコングロマリットのような形態では事業に関する情報の透明度が低いってことでしょう。また、上述のように、価値が低く見積もられているという主張は、その事業が独立していたらどうかという仮定の場合との比較でしかないわけですから、根拠に乏しく、コングロマリット・ディスカウントなどそもそも存在しないという説もあります。

 フランスのマスメディア・コングロマリットであるVivendiは、コングロマリット化を推進した前CEOの過激な買収攻勢により破産一歩手前の状態にまで追い込まれていた。現CEOはその建て直しを迫られている最中であったが、現下のユーロ危機に伴う業績(株価)低迷の打開策として、保有するAtivisionBlizzard株式を売却して含み益をリアライズし(配当にまわすにしろ留保するにしろVivendiの株価をブーストでき)、同時に複雑すぎると批判されているポートフォリオを改善しようとしているようです。

 つまり、ActivisionBlizzardに「まともな値札がつきそうだから」売却しようとしているわけであり、ActivisionBlizzard自体の価値が毀損しているわけでもなんでもない。まな板の上に載っているActivisionBlizzardのCEO、Bobby Kotick曰く「よろしいんではないの?」"It's great weather."(直訳は、「絶好の売却日和だぜ」(笑))

http://asia.gamespot.com/news/activision-blizzard-finding-few-potential-buyers-report-6386910

 ところが、潜在的買い手からは、今のところそっぽを向かれている、というのが次の話。

 手元にキャッシュを持っていそうなDisney、Time Warner、MSへの接触は不調。Disneyは興味を示さず、Time Warnerはこれ以上ポートフォリオにヴィデオゲームを組み込むようには見えず、MSはXbox次世代機の開発で忙しい。

(訳:上記リンクの記事のまま書けば)日本のNexon(訳:知らなかった。Nexonって半島国企業じゃなかったっけ?)や大陸国Tencent(インスタントメッセンジャー、SNS最大手)は、即座に払えるキャッシュを持っていない。 

 とはいえ一番可能性が高そうなのは、なんといってもMS。新Xboxの開発で忙しいとか、金が要るとか言ってるけど、なにしろ金余ってるからね。 

http://asia.gamespot.com/news/microsoft-among-potential-buyers-for-activision-blizzard-report-6386412

“Microsoft does not comment on rumors or speculation.”

 自社のビッグタイトルを有していないMSが、このオファーをどう考えるか注目です(ゲーミング業界の某アナリストによれば「買うことはありえない」そうですが)。

 考えうる可能性は、 

・(MSしか思いつかないが)金持ってるゲーミング・ジャイアントに売却
・またしても筋違いのどこかのコングロマリット、あるいは後述する「ファンド」に売却
・市場に売却

 ついでに、EAも身売りを考えているとの噂。

http://www.gamespot.com/news/ea-for-sale-6391937

 こちら元記事、New York Post。

http://www.nypost.com/p/news/business/mad_for_madden_3lyqSl04ZEpZeO9Zmh81GI

 こちら、このPostのニュースを受けてEAの株価がサージしたことを告げるBusinessWeek。

http://www.businessweek.com/news/2012-08-16/electronic-arts-jumps-the-most-in-six-months-on-takeover-talk

 登場する「潜在的買い手」は、プライヴェート・エクイティ・ファンド(またよくわからん名前が出てきたね)。むしろ「バイアウト・ファンド」というとわかりやすいでしょうか。レヴァレッジド・バイアウト(注)を得意とする、小泉・竹中時代に国有財産を処分する際、抵抗勢力の政治家連中が唾棄すべき売却相手と呼んでいた「ハゲタカ・ファンド」みたいなもの(厳密には違う部分もあるが)。

(注)レヴァレッジド・バイアウトは、買収をもくろむ相手の企業(あるいは事業の一部、不動産でもいい)の資産・キャッシュフローをあてにして(担保にして)、買収資金を捻出する(調達する)手法。よく言われるような「人のふんどしで相撲をとる」のではなく、「相手のふんどしまで勝手に質に入れて相撲をとる」手法です。
 ええっと、「人のふんどしで相撲をとる」は、株式会社全部そう。自身資本家でもない経営者がいじっているのは、"other people's money"。

 記事中に登場するバイアウト・ファンドのひとつは、すでにBethesdaの形式的親会社、Zenimaxの株式をコンヴァーチブル・プリファード・ストック(注)の形で20%程度保有している。

(注)うーん、だんだん株式用語の説明が面倒になってきたなあ。プリファード・ストック、優先株と呼ばれますが、普通株より優先的に配当を受け取る権利のある株式(社債よりは劣後)。その代わり一般に株主総会での議決権がない。これがコンバーチブル(転換可能)というのだから、普通株への転換が任意にできるってことである。つまり、調子いいうちは金さえくれれば黙ってるが、調子悪くなったら口出すかもね。

 この噂は、株価低迷に悩むEAが自社株買戻しを進めている(市場に出回る株式の数を減らす、株価底上げの常套手段である)ことから信憑性が高まっている。足元(記事の当時)14USD程度の株価が自社株買いの効果などで20USDまで回復すれば「売り値」として成立するという説も。まあこの噂のリーク自体も株価上昇効果を狙ったんだろうから、出所が「ハゲタカ」方面だろうという予測はわかりやすいね。 

 皆様おなじみの、「タブレットとソーシャルの動きに乗り遅れた」というのがPostの記事でも理由として説明されている。某業界アナリスト(このブログ記事に登場するのはずっと同じ人だ)によれば、年末までにはEAの株価は倍には回復するはずで、「ハゲタカ」への身売りは考えにくい、としている。 

 SWTORの期待はずれな業績(上述のアナリスト含め、皆が心配ないと予想していたお話は、ここ)が結果的に致命的なダメ押しになったわけではないでしょう。事態はずっと前から動いていた。
 リーマン・ショック以降、ユーロ危機に至るまでの経済情勢から見て、「人類の生活にも世界平和にも何の役にもたたない」(by任天堂・山内翁)ヴィデオゲームが真っ先に売れなくなる製品のひとつであることは当然。ましてや60USDは確かに高い。贅沢品の部類だ。

 さらにハードコア・ゲーマーが(その定義上)ある数から決して増えない一方で、ライト・カジュアルと呼ばれるノン・ゲーマーがスマホやソーシャルのノン・ゲームで遊ぶ世界への移行が進む。
 ハードコア・ゲーミングが衰退してきているというよりも、潜在ユーザーの希少な時間を奪い合う似て非なるもの(ライト・カジュアル向けゲームと呼ばれるノン・ゲーム)が広い範囲で普及してきたという見方が正しいと思う。
 まあ、他に遊ぶものないからハードコアなゲームに付き合っていた比較的カジュアルめの層が、ソーシャルに移ったということも否定しないが、本質的には「今までゲームなどしたこともない層が参入してきて、それぞれ60USDなんかよりずっと小額なお金を使っているが、なにしろ数が膨大」という世界ではないでしょうか。

 でも、その世界がどこまで拡大するのか、「常識」になるのか、あるいは一時的な流行で終わるのか、それはさすがに読みきれません。

 業界全体がそうした予見の難しい不確実な将来に向き合ったとき、ビッグプレイヤーたちですら(だからこそ)このくらいおたつくのは普通であろうし、その「恐怖」につけこんで「ハゲタカ」が「はよ、売り逃げなはれ」と囁くのも連中の行動規範からして当然だろう。 

 逆に考えれば、「ハゲタカ」が「買い手がつきそう」だと動き出しているということは、別にビジネスとして腐りきったわけではない、という弁護もできないわけじゃない。
 だがそれは「ハゲタカ」が我々の知っていることしか知らない、という前提にたってますけどね。

 ま、Dragon Age 3の開発を何年も待ってくれる「ハゲタカ」がいるかどうか知らないけど。ハゲタカだけに辛抱強いかもな。

 EAラベルの責任者ギブー氏が、新世代コンソールはSonyのもMSのもどちらもすでに見たと語っているが、それはともかく、「F2Pがこれからは支配的規範になっていく」というご高説。

 彼によれば、「10年前に2百万人(上で私がいうコア・ゲーマーだ)を相手にしていたゲーム業界は、いずれ全世界20億人(ノン・コア・ゲームを遊ぶノン・コア・ゲーマーたち)向けとなっていく」

http://www.gamespot.com/events/gamescom-2012/story.html?sid=6391925

 そして、BioWareブランドが引き取ったCommand &ConquerはF2P化。

http://www.gamespot.com/news/command-and-conquer-goes-free-to-play-today-6366388

 いろいろなことがいっぺんにおきていますけど、まあ流れはわかりやすいですね。

 どこに流れ着くかは、まったくわかりませんが。

 F2PのDA3か。そんなんなっちゃったら、長生きなんてするもんじゃねえってことだな・・・。

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