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2012年9月26日 (水)

マクガフィン

※ 以下の記述は、一部の引用作品の核心部分、ネタバレに触れていることがあります、っつうか、核心部分になぜか触れようとしないので、何が核心部分かわかってしまう恐れがあります(ナチュラル・ウィズダムの高い読者は特に注意)。
 
 でも、一部を除いては著名作品ばかりなんでご容赦下さい。 

 先日の記事の「薔薇の名前」に関するコメントで、「マクガフィン」(McGuffin)なる言葉を思い出しました。 あの映画では、主人公が巻き込まれる論争であるとか、極めてレアな伝説の書籍であるとか、著者の膨大な知識・薀蓄が披瀝される様々な仕掛けが用意されていますが、いずれも本筋に特に関係がない。 

 ヒッチコック監督の映画「サイコ」では、冒頭に登場人物の女性が横領する「現ナマの袋」が「マクガフィン」ですね。ご承知のとおり本筋にまったく関係ない。別に他のものでもいい。でも、おかげで物語がぐいぐい進む。

 そのように、登場人物にとっては非常に重要であるが、読者・観客にとってそれ自体はどうでもよく(置き換え可能)、物語構造に関係ないが、物語を推進する仕掛け・小道具の類をヒッチコックは「マクガフィン」と呼び、盗賊ものなら「宝石」、スパイものなら「書類」が一般的であると説明した。語源は、ある小説家(キプリング)が多用した「軍人が敵の地図を盗むプロット」であるそうだが、その語源自体にすら特に意味はなく「置き換え可能」であった(素晴らしいなあ)。

 お気づきですか?

 RPGのクエストなんて、ぶっちゃければほとんど全部が「マクガフィン」(McGuffin)によって推進されているのである。

 「レッド・ヘリング」red herringと混同しがち。
 「レッド・ヘリング」、燻製いわし(に限らない燻製魚)は「人(読者・観客)の注意を他に逸らすもの」で、元はハウンド(猟犬)に狩りの訓練をするため強烈な匂いを放つ燻製で気を逸らしたと言われていたが、これすら「偽り」で、実際に用いられた訓練手法ではなかったそうだ(素晴らしいなあ)。

 一般にはミスディレクション(見当違い)というミステリーの手法を呼ぶために用いられ、燻製魚のように強烈な印象を与えないと意味がない。アメフトのクォーターバックがミスディレクション・オプションなどのプレイで行うフェイク(欺瞞行為)のように、ワイドレシーヴァーがディフェンス・セカンダリーを引き付けて味方の誰かをフリーにするように、敵にわかりやすく、派手に見せつける必要がある。

 「マクガフィン」は、逆の意味で読者・観客に注意を向けさせるものだが、特段強烈な印象を与える必要がない。一般的な読者・観客が素直に考えて「なるほどそうかな」と納得すればいいだけ。アメフトに喩えると何かわかります? そう、「ボール」そのものがそう。ビーチボールでも、家宝の壺でも、ピカチュウのぬいぐるみでも、あのゲームは成立する(誰もプレイしたがらないだろうが、つか壺は蹴れないだろうし!)。

 
 ある映画のシナリオを読んだ映画会社の偉いさんから「原爆を連想させるウラニウムを映画に出すのはまずかろう」と難色を示されたヒッチコックは、「じゃあ、ダイアモンドで。つか、なんでもいいっすよ」と平気で答えたそうである。

 RPGのジェネリックなクエスト目的のほとんどがカンペキにそれにあたることを説明する必要はないですよね? あれとってこい、何してこい、誰連れて来い、敵いわしてこい。
 実のところ、DAOならアンドラステの遺灰もそう、ドワーフの虚空のカナトコもそう。「もの」である必要すらなくて、ウェアウルフ襲撃の謎探索もそうだし、サークルタワーがディーモンに占拠された理由探しもそう。
 ボスキャラもそうなんですよね。下手するとラスボスまでそうである。アーチディーモンがアーチディーモンである必要はなく、リーパーズがリーパーズでなくても構わない。

 ようはセダスを、銀河を、危機から救えばいい。

 物語づくりとは、そういう、みもふたもないむき出しの構造を見せないように工夫するってことでしょう。
(ME3のエンディング騒動の発端の一部に、みもふたもなく構造自体を見せてしまったことがあるのは否定しない)

 「マクガフィン」と「レッドへリング」を混同してしまいそうな応用編で特に印象深いのは、SF作家フィリップ・K・ディックの作品 「ユービック」。こんな話だ(ネタバレだ)。 

 プレコグ(予知能力者)ら超能力者が人々のプライヴァシーを侵食している未来(といっても作中では1992年・・・)。反超能力者連合を組織して超能力者たちに対抗する企業の社長は、月に結集しているとの情報を得た超能力者らを打倒べく、討伐パーティーを編成して地球を旅たつ。

 超能力者たちとの一大決戦の火蓋が今まさに切られようとしている!
 ところが月に到着した彼らは、プレコグたちの爆弾によって大半が爆死してしまう(なにしろ敵はプレコグだからね・・・)。

 無残にも瀕死の重傷を負った社長の遺体を抱え、ほうほうの体で地球に逃げ帰った(はずの)討伐隊の生き残りは、身の回りで起きる驚愕すべき現象を目の当たりにする・・・。 

 ま、あとはお読みくださいですが、冒頭のスリリングなアドヴェンチャーは「え、一体なんだったの?!」と誰しも疑問を抱かざるをえないくらい意味不明。その後の展開と一体なんの関係があったのか? 

 ここまで過激な用法はさすがに珍しいでしょう。ユービックではないが、「使用上の注意」を誤ると、ただの物忘れの激しい作者の中途半端なプロットに受け止められかねないマクガフィン。

 でもジェネリック品は、さがせばそこらじゅうに転がっている。

 たとえば、先日観た映画「アヴェンジャーズ」の青いキューブがそう。あれも別になんでもいいんだよな。あの物体に意味を無理やりこじつければこじつけるほど、どんどんあれが「どうでもいいもの」であることがハッキリしてくる、わかりやすい展開。

 映画「アバター」にも、なんだか似たようなものがあった。鉱物資源? あれも最後はどうでもよくなっちゃったよね。だって私もよく覚えていないもの。 

 実は、映画「プロメテウス」の「創造主を探せ」という、一見もっともらしいメインテーマも、マクガフィンじゃないのかな、と私は疑っている。あの映画でも、創造主を探すかどうかなんて、最後はどうでもよくなっちゃったしね・・・。続編を作りたいから無理矢理ひっぱったんじゃないか、と思うくらいです。

 

 

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