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2012年9月29日 (土)

Torchlight II、破壊的イノヴェーションになりうるか。

 Torchlight IIをしばらくプレイして。

 Diablo IIIも、中盤くらいまでで、まだクリアしていない。
 
 両者ともストーリー性には特に「売り」がないという前提で話をします。前者はまだプレイ10時間以内、つまみ食い程度なんで、エンディングを見なくても何か言いたい、その言い訳。

 ビジネス書籍を薦めてくれといわれたら、「ドラッカーをちゃんと読もう、以上」で済ませてもいいのいだけど。
 「歎異抄」しか読まずに仏教を語ってるみたいに思われるとシャクなんで(いや、それで十分という説もある)色々紹介はします。

 なんでもありのダボハゼ主義の私でも、なかなか万人に勧めにくい名著がある。
 しばらく前に出た、クレイトン・クリスチャンセンの著作で、邦題は「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」(2001)というもの。原題は"The Innovator's Dilemma"。(1997)

 Amazon.co.jpの惹句。

「顧客の意見に熱心に耳を傾け、新技術への投資を積極的に行い、常に高品質の製品やサービスを提供している業界トップの優良企業。ところが、その優れた経営のために失敗を招き、トップの地位を失ってしまう――」

 ハーヴァード・ビジネス・スクール教授の著書であるが、アメリカ市場のハードディスク・ドライヴ(HDD)の広告をつぶさに調べ上げ、業界の価格破壊、テクノロジーの世代交代、そして業界大手の「滅び」がいかにして進行していったかを丹念になぞった調査論文(こちらは著作から先行してハーヴァード・ビジネス・レヴュー(HBR)に掲載されていたはず)に基づく、きわめてオタクな、オタク経営学のはしり的研究。

 ところがこれは、なかなかすんなり腑に落ちない議論なんですよね。当時(10年以上前かあ)、この手の本が好きなおっさんたちにも「なんだかよくわからんな」という人が結構いた。言ってしまえば、そういうおっさんたちが大手企業(あるいは事業)を滅ぼしていった(座して死を待つばかりに追いやった)のが今の日本で「やばい」と言われている一部企業の姿でしょうかね。お、時期的に喪われたなんとかに合致するかな。
(逆にAmazon.co.jpでレヴュアーが絶賛しているのが不思議なのだが、わざわざ評価・レヴューなど載せるのは世代も志向も偏った人たちであると理解すればいいんだろうか)

 つまり、「滅び」は身中にビルドインされている。勝者は勝者であるが故に滅ぶ。盛者必衰、諸行無常の響きあり。

 続編である"The Innovator's Solution" 「イノベーションへの解、利益ある成長に向けて」(どちらも2003)のほうがとっつきやすいという説もあるそうなので紹介しておく。

 原本が手元にないのでWikipedia(en)を参照すると、論旨はこうだ。一旦成功した大手企業(その製品、事業)は「既存顧客ニーズのあまりに過度な重視」によって、「顧客の語らないニーズ、または将来ニーズの軽視」という態度が生まれる。著者は後者のニーズを実現するイノヴェーションを「破壊的イノヴェーション」(disruptive innovation)と呼び、それはまず主流市場(セグメント)とは異なる目的・用途を求める新しい顧客層の市場で成立し、やがて価格破壊をもたらしつつ主流市場を席巻するとしている。実際、「主役」が目まぐるしく交代することとなったHDD市場は見事なまでにこの繰り返しであった。

 
 これが正しいとすると、例えば「モバゲー、スマホゲーは『ゲーム』じゃない、既存ゲーマーとはまったく異なる人々の時間つぶしの嗜みである、ゆえにコア・ゲーム商売には影響は少ない」という説がもろくも崩れ去りかねない。TGS2012では40%がスマホゲーなどの、いわゆるノン・コアゲームの出展であったそうだ。品揃えを眺めると、まだコアゲーム・サイド(いわゆる「主流」ゲーム)もかなり善戦はしているようだが、生き残っているメーカーの数がどんどん減っている気がする。すでに死傷者が出まくってるのかもしれない。

 任天堂がやばい、Sonyがやばいと日本のメディアが嬉しそうに騒いでいるのもあながち根拠なしでもない(どこまで考えて言っているのかは不明だが)。3DSにしろ、Vitaにしろデヴァイス・メーカーとして「イノヴェーション」を生もうという試みであることには違いないのだが、いかんせん「破壊的なイノヴェーション」ではないところが味噌。

 新型の価格は旧型より「高く」設定され、グレードアップ版であるのを「売り」にして、基本的には旧型と同じ市場を目指している。「カニヴァリズム」(元は人肉食い、共食いの意味。ビジネスでは新商品が既存自社商品のシェアを食ってしまって元も子もなくなってしまうこと、その危険があること)を恐れて値段を下げることが出来ず、DSもPSPも「まだまだ健在ですよ」と触れ込んだりする。結局、3DSの場合は大幅値下げ前にはカニヴァリズムの心配すらいらなかった。新型が売れなかったからね。

 先行者としてのカルマも背負っていて、過去ゲームとの互換性維持(バックワード・コンパチビリティ)に縛られてしまうきらいが無きにしもあらず。過去の莫大なゲーム・ライブラリー(アーカイヴ)の存在は使い道によっては有利な点ではあるが、高額な新機種で遊ばざるを得ないという矛盾もある。
 MSのキネクトにしたって、どんだけ開発費かけたか聴きたくもないが(少なくともMSにしかできないオーダー)同じ。今と同じ相手に、より高く売ろうとする目論見であって、「破壊的なイノヴェーション」ではない。

 まとめると、任天堂とSonyは、既存顧客の意見に熱心に耳を傾け(過去ユーザーを見捨て切れず、自社製品とのカニヴァリズムを恐れ)、新技術への投資を積極的に行い、常に高品質の製品やサービスを提供しようとしている点で、クリスチャンセンの業界トップの優良企業のモデルに当てはまってしまう(MSもそうなのだが)。

 Steam/Valveが開発を狙っているという漸次進化型ゲーミングPCもイノヴェーションであるのは間違いないだろうが、高価格がネックになる可能性が高く、「破壊的イノヴェーション」ではない。

(PCエンジンやセガのマシンはなぜ滅んだか。ワンダースワンはどこへ行ったのか(あちらでも過去のものとなったマシンが数多くある)。クラウド準拠型ゲーム機ビジネスONLiveは案の定しくじったが、G-Clusterはどうか。Android OSのゲーム機OUYA(これもKickstarter案件であった)は「破壊的イノヴェーション」になりうるのか。色々考えると面白いのだが、話が果てしなく広がるのでやめておく)
 

 ハードウェアよりずっと危なそうなのがソフトウェア。大艦巨砲主義(は古いので原子力空母艦隊の打撃力重視主義)、高開発コスト・大量販売を前提としたAAAタイトルに依存したあちら(欧米)のメガパブリッシャー・ディヴェロッパーである。

 これは(和製に対して)後発参入であったからとっても仕方のないことだが、こなれたゲーム・エンジンという開発者フレンドリーなツールを所与のものとしてスタートし、(だからこそ)取り敢えずの成功を手に入れたところがほとんどであり、根源的なノウハウ部分の蓄積が少ない。DNAが似通っているから滅ぶときは恐竜みたいに全部いっぺんに滅ぶ可能性もある(ウィルス説。そんなことはあるわけない、という生物学的知見も最近はあるそうですが)。

 もちろん、やつら(メガ・パブリッシャー)は極めて賢いし、そんなことにはとっくに気がついている。気がついているが成功体験の呪縛から逃れるのは容易ではない。特に大企業はそうだ。

 
 
 本題は、Torchlight II。そしてDiablo III。

 前作Torchlightは「ま、こんなものかな」と言う程度の評価で、個人的にはそこそこ遊べました。安かったし、ペットの犬猫の発想は面白いし、釣りにはなぜかはまったし、ヴィジュアルのバタ臭さは許容範囲内だし、時間つぶしにはもってこいだし、でもルート・テーブル管理から何から、色々な面でクリックゲー(ハクスラ)としてはまだまだ未完成だよね、と感じていました。

 Torchlight IIはやばいかもしれない。個人的にはDiablo IIIから劣後である部分があまり探せていない。あのBlizzardの「神がかり」とまで言われたルート・テーブル管理も今度はうまく模しているようで、IGNによれば「非常に良い」できばえだそうだ。ダンジョン・オンリーと批判されたワールドも「オープン」フィールド化して、マルチプレイはCo-opがついた。形式上はさほど遜色ないレベルになってしまったのだ。(Diablo IIIの、あの音響とシンクロしたクリック連打時のリズミカルで麻薬的な快感まではさすがに追いついていない気がするけど。そことマルチプレイの質の差がDiablo IIIのヴァリューとして残るんだろうか?)

 それでもって狙いは価格破壊(20USD)だし、市場はSteamユーザー中心だし(Diablo IIIはもちろんBattle.netオンリー)、どうしてもクリスチャンセンの「破壊的イノヴェーション」の罠の話を思い出してしまう。

 ましてや、何年もかけて作った分だけ期待が大きすぎて、当初から「えっ?」という失望の声があがっていたDiablo IIIと比較して喪うものがないTorchlight IIは有利である。いまや前者が「そこそこの出来」で、後者が「上出来」っていう評価が一般的。判官びいきももちろん込み。

 GameSpotのレヴューは、Torchlight IIをDiablo II(Diablo IIIではない)との比較において、「まったく遜色ない」と評価している。そのこと自体が批判されているが、これは商業サイトとしてどうしようもない。

 http://www.gamespot.com/torchlight-ii/

 つまり、GameSpotですら「Diablo IIIと比べて遜色ない」とは書けないのだ。Blizzardがおっかないから。だからといって、もう十年以上前に出たゲームと比べるってのはどうなんだろう。

 だから、きっと20USDのTorchlight IIは、60USDのDiablo IIIと遜色ないという評価なのだろう。少なくとも三分の一という価格差見合いで考えて。 

 GameSpotのレヴュアー、キャロラインによれば、「Torchlight IIにはDiabloがさきがけとなったハクスラ分野にイノヴェーションを持ち込んだわけでもなく、サプライズももたらさないが、拾いゲーの魅力的なレシピに忠実に従い、成功した」そうです。

"Torchlight II doesn't innovate and it doesn't surprise, and the genre may need an infusion of new ideas if it's going to stay vital. But Torchlight II serves up the old, irresistible recipe about as well as it's ever been done." 

 60USDに対し、20USDで出している時点でイノヴェーションじゃないのか、あちら前作から十年以上かかってリリースされたのに対し、前作から一年半で出してる時点でサプライズじゃないのか。 

 キャロラインは「ハクスラ分野には新しいアイデアの注入が必要」と述べているが、それがDiablo IIIの「オークション・ハウス」というのはどうなんだろうか。

 Torchlight IIIが仮に来年リリースされたら、さすがのGameSpotもDiablo IIIと比較せざるを得ない(そうしない理由がなくなるから)。そのとき「両者もはや遜色ない」と書くしかなくなるかもしれない。ならば価格が三分の一のままであれば、勝者は誰の目にもハッキリしてしまう。 

 完成された「レシピ」はこのように模倣に非常に弱い、ということもいえるわけですよね。

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