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2012年11月13日 (火)

ジャンル小説におけるロマンス(のなさ)

 こんなところで物語のハッピーエンドが是か非かなどと論じても、何も得るものはないでしょう。世の中には二種類の物語があって、ハッピーエンドかそうじゃないか。両方あるんだから、両方求められてるのでしょう、きっと。 

 ただゲイダーさんのいう、「メイン・ストーリーと関係しない、予め成就が約束されたロマンス」ってのは、実はそこらじゅうにありますね。主としてジャンル小説に。

 ラノベなんかはメイン・ストーリーがロマンスの場合がほとんどでしょうから、対象外だろうけど、テーマがそうではないもので探せばあると思う。

 かつてミステリー(推理小説)は、異性交遊ご法度であった。

 推理小説の古い掟、いくつかヴァリエーションがあるが、日本人(いまや「だけに」かもしれない)に有名なのは「ヴァンダインの二十則(20のルール)」でしょう。
 詳細をお知りになりたければ「Wikiれ、ぐぐれ」ということですが、その三番目にあります。

 "ストーリーを読み解く上で意味のないラブストーリー的要素を登場させてはならない" 

 じゃじゃーん。

 似たようなものにこんなのもあります。十六番目。

 "ストーリー展開に影響を及ぼさない描写や文学的表現は省略すべきである" 

 ヴァン・ダインの説明からはじめなければならないとすると、おっさんちょっと脱力してしまいますが、一時期は米国推理小説界のエースとされていた作家さん。フィロ(ファイロ)・ヴァンスなる、叔母の莫大な遺産を相続して暮らすハーヴァード大学卒の有閑独身主義者が名探偵役で、ニュー・ヨークを舞台に「僧正殺人事件」など、いくつもの難事件を解決したことになっている。

 上のルールは、英国のアガサ・クリスティがそれまでの推理小説の暗黙の掟を無視しまくって好き放題やりまくって、かつ大絶賛を浴びたことを受け、おそらく嫉妬の念ともに「掟を守れや!」という意味で怒りに任せて明文化したのでしょう。(つうか「そんなトリックわしゃとーっくの昔に気づいとったんじゃが、恥ずかしくて使えんかったのよ!」というスノッブ主義の負け惜しみだろう。立派に研究している人いるだろうから、知りたければそっちに聞いてみて)

 前身となったかどうか知らないがさらに古いノックスの10のルールに「恋愛禁止」はないので、ヴァン・ダインがクリスティなどの作品のロマンス重視の傾向を苦々しく思って書いたのか。(名探偵フィロ・ヴァンスが作者ヴァン・ダインその人のアヴァターであるそうだが、そうであれば「有閑独身主義者」ってところ、ミソですよね)

 いずれにしろ、20のルールはごらんのとおり「破ってなんぼ」の世界にさらされ、今では逆に掟破りが陳腐すぎて、必然的にみな守るようになったとか?

 ヴァン・ダインなどとっくに忘れ去られた一方で、アガサ・クリスティを知らない現代人はまずいないのではないかしらというのも皮肉。

 ヴァン・ダインを弁護するなら、ポオから連なる分析的知性の小説であるジャンル(推理小説)にフリル(飾り)は必要ない、と言いたかったのだろう。ま、今誰も彼のことを知らないのだから、結局間違ってたんだね。

 次にサイファイ(SF)行ってみよう。って、完全に詳細失念してしまっているのだが、こちらのより若いジャンルにも黎明期には同じように「掟」、あるいは「タブー」のリストがあったはずなんだよね。

 こちらの「掟」は、主としてパルプ・フィクション時代の売れてなんぼ、「BEM(目玉のやたらでかい異星怪物)とレーザーガンを持った半裸のお姉さま」が登場する名ばかりのサイファイ(SF)とは一線を画して、「少しはまじめに科学やろうよ」と訴えかけた専門誌編集サイドの要請だったと記憶している。

 そのタブーにふたつ、「宗教ネタ禁止」と「セックスネタご法度」というものがあった。
 ふたつとも一気に掟破りしたことで有名なのがフィリップ・ホセ・ファーマー。爾来、何人かが続いて広げて、ふたつともサイファイになくてはならない重大テーマとして今日まで至る。

 広い意味でのサイファイにあたるファンタジー、たとえば火星の大元帥閣下「ジョン・カーター」にもあられもないヌード(半裸)やら、サドマゾもどきの際どい描写は山ほど出てくるが、セックスネタ自体は避けられている。 

 思いっきり男性中心の物語ですから、「コナン」のように主人公が出会う美女は片っ端から不幸な結末をたどる趣向もシリーズを続ける上で不可欠な要素だったのだろう。
 逆に「ジョン・カーター」のように「一目あったその日から」麗しの彼女と相思相愛、娶ってからもお互い一生尽くし倒すのもなんか気恥ずかしいけど。

 あちらではかつてジャンル小説の王道だった「ウェスタン」でも露骨な性描写は避けられていた。基本的にアメリカ女性嫌い(ミソジニー)文化の象徴的ジャンルであることはすでに書きましたね。「ホラー」はかつてエログロの代名詞。ただ最近ではもうジャンル小説の域を超えちゃったらしい。「ハードボイルド」はハメット、チャンドラーなどの「文芸」作品も登場するが、基本は「俺様のガンがものを言うぜ」のエログロ・ヴァイオレンス。でもマッチョなタフガイは女性に優しいのだ(男性視点でね)。

 なにが言いたいかというと、こうやって列挙してきた私は「一般化」したいわけだ。

 まずはアメリカのことしか言ってないな、と気がついた人鋭い。結局こうしたジャンルが花ひらいたのはアメリカで、かつパルプ・フィクション・マガジン勃興時代。スタンド売りの雑誌にはエロ・グロものもたくさんありました。一方で特定ジャンルに絞った作品で売っていこうとしていた刊行物の編集者たちは、マーケティング上、「エロ・グロ」とは一線を画そうとしていたのでしょう。次号も間違いなく買わせるには、エロ・グロじゃない続き物のほうが固いもんな。前提として、当時の読者は大多数が男性である。 

 つまり、アメリカのジャンルものはここで戦略的に「毒抜き」された。セックスと一緒に、ついでに紛らわしいロマンスまで毒抜きされちゃったのじゃないか。ここにも女性嫌い(ミソジニー)文化の影響もあったのでしょう。

 まあ、その後の展開について、根拠のない妄想を爆発させていきますと、半裸のお姉ちゃんが表紙に乗ってない、中身にエログロのないパルプ・フィクションは家庭に持ち帰りやすい。女性も手に取るようになったが、登場人物には何のロマンスもない。つまらない。そういう読者の声が編集に伝わるようになる。 

 編集は手のひらを返したように、「おい、作家ども。ちっとは、ロマンスも入れろや」と号令をかけるが、でもジャンル小説にロマンス?
 上のヴァンダインやサイファイの掟ではないけど、そういうの抜きでいいっていうから書いてたんだよな。ロマンスなんてそう簡単に書けません。

 「いいんだよ、とりあえずチューさせりゃいいのさ、チュー!」

 セクハラなんて言葉すらない時代ですからあしからず。もちろんホモセクシャルなんて話題にするのもまだタブー(ここにも掟破りはあっただろうが)。

 で、結局話の筋とはまったく無関係に、主人公(ほとんど男性でした)とヒロインとのとってつけたようなロマンス劇が繰り広げられるようになっていく。言葉が適切かどうかしらないけど、ジャンル小説にロマンスが「移植」された。

 有名ミステリーなら、クイーンでもカーでもおして並べて主人公と相方のロマンスはあけすけに好意をさらけ出しあうヴィクトリア朝風で「ああ、このふたりはくっつくんだな(くっついてるんだな)」と最初からわかるようになっている。まずほとんどがこういうパターン。
 もともとミステリーといってもパズラー、殺人「パズル」だから、謎解きに影響を与えない、解明過程で変数とならない(でも触媒にはなりうる)、読者が安心できるようなこっち(読者)側の視点にたったカップルが都合よかったのでしょうね。 

 でも、きっかけがないと手を握りあったりさえしない、やたら純情カップルなの。

 そして、深夜に屋敷の回廊で怪しい人影を見かけたそんなふたりが、犯人らしき者の魔の手から逃れるため狭いクローゼットかなんかに一緒に身を隠し、彼女のブラウスを通して若く早い鼓動が彼の手の甲に、胸元には熱い吐息が、とか陳腐な流れになるわけよ。

 中学生の肝試しレベルかよ。いやほんとそんなもんよ。 

 予め約束されたロマンス。しかも物語のメイン・プロットに一切関係しない、というのはこういうものが好例だと思います。サイファイにも、ファンタジーにも、ほかのジャンル小説にもたくさんあるでしょう。

 そんなもんでも読者が感動していた時代、作家は楽っちゃ楽だったのだろうね。

 今となっては読者サイドがすれっからしてるから、やれロマンスが陳腐だの、ハッピーエンディングはだめだの、悲恋がいいだの、うるさいったらありゃしない。

 「ハリポタ」まで、主人公がやむにやまれない性の衝動にかられてしまうご時勢だ。現代的? 
 もちろん、あの「オズ」にしても実はただ「性」しか描いていないといううがった見方はあるのですけどね・・・。

 一部を除いて、なんら時代考証もしていなければ、裏もとっていなければ、ろくな引用もしていませんが、時間とやる気あったらできます。当たらずとも遠からずだと思いますけどね。

 

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