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2012年11月10日 (土)

ポー、リンカーン

 強行軍で観てまいりました二作品。 

 「推理作家ポー・・・」は"The Raven"(2012)。

 「リンカーン」と書くと、スピルバーグの"Lincoln"(2012、日本公開は2013年春ですかね)と混同しそうですが、ここのブログでそっちを先に取り上げることはあるはずがない。もちろん"Abraham Lincoln: Vampire Hunter "(2012)のほうです。 

 「ポー」は期待したんだが・・・。

 ひとことでいうと、オタクが「雑学」をちりばめた(つうか、眼いっぱい放り込んだ)中途半端なオマージュもの。 

 誰か(内田樹氏かな)の受け売りですが、「雑学」と「教養」は違う。

 「雑学」は、「ある分野について、知りもしないことまで含めて必死に網羅的に覚える」ことで、映画なら「観てもいない映画に関する表層的な薀蓄(誰が監督で、主演が誰で、どうしたこうした)をひけらかすため溜め込む」ようなこと。

 一言で言えば、あのNHKこどもニュース出身のなんとかいうおっさん(固有名詞忘れたが調べる気も起きない)のやってるようなこと。つまり、薀蓄の羅列にはこどもしか感動しない。

 そして雑学博士は「(ある特定ジャンルに関する)知識を知らない(と白状する)ことは許されない」。非常にたちの悪いオタクの類型ですね。知ったかぶりのカーミット(セサミストリート)。 

 「教養」は、「そういえばあれもそうか」、「その話で思い出した」というフレーズが象徴するような、ある種本質的、根源的につながりのある事柄を連関付けること。それができる人が教養ある人だそうです。 

 (おおかたの)庶民にとっては悲しいことに、ほぼ生まれつきで素養が分かれてしまうそうだ。(ほとんど生い立ち、保護者のおかげなのだが)幼少の頃から青年期に達するまでに広く文芸や芸術・知識に触れることによって、自然と身につくのが「教養」。

 そういう青少年時代を経ていない者には、「雑学者」になるしか道がない。武士の情けで「オタク」と呼ぶのはやめておく。

 たとえば映画なら、「雑学」しかない者は「この映画は誰それが誰それの原作に基づき、アカデミー賞受賞者が三名出演していて、登場する艦船・列車などは実際のなんとかを実寸大で再現したセットを半年の工期で完成させ、撮影は実際の事件の起きたどこそこで数千人のエキストラを動員して数十台のカメラをどうしてこうして、だからすばらしい」、あるいはそういうスペックではないから「つまらない」とかのたまう。
 逆に言えば、そんな内容なら映画を観なくても評価できる。

 「教養」ある者は、誰が監督だとか脚本だとか、どうしたこうしたなど一切知らずとも、実際に映画を観れば、直感的に「すばらしい」、「つまらない」と述べることができる。「これは違う」、「これはいいものだ」と嗅ぎ分けるのは、なんすかね「テイスト」なんでしょうかね。

 テイスティングは、圧倒的に「場数」の勝負ですからねえ・・・。

 別に私が教養あふれる人物であるなどとは言っていない。

 だが、ガキの頃にポーを読んでちびり、その後も何度か読み直してちびり、今回また翻訳者丸谷才一さんの訃報に接して読み直してちびった者として言いたいが、あの映画は、ちょっとないよ。 

 ネタばれになるので詳細触れませんが、「ポー」のミステリー系、ホラー系の小説群の本歌取り的な犯罪が連続して発生する。いわば、できの悪い「セヴン」("Se7en"、1995)だ。いや「セヴン」も言うほど出来がいいとは思えないけど、あれ観ちゃった人に「ポー」を観て驚けはきつい。小説ではもっと隠避で残酷で鬼畜な犯罪(事件)だったはずのシーンが、どれもこれもあまりにちゃち過ぎて一気に興をそぐ。

 味わい自体、テレビ映画的な安っぽさが拭い去れない。物語進行も典型的マッチポンプ。犯行現場の何箇所かで主人公たちは犯人らしき姿を見かけるが、その都度必ず取り逃がす。次の犯行現場を指し示すシグナルが残されているが、カギはすべてもとの小説の中にあるので、予備知識なしで観た人にとっては、主人公たちのせりふに頼るのみで、ただわけもわからず誘導されているだけでしょうね。
 しかも、あまりに多くの「事件」を盛り込んでしまっているので、ひとつひとつの事件(小説)に関する薀蓄をひけらかす暇もないくらい、表層的にエピソードをなぞっていくだけである。

 ダウニーJr主演の「シャーロック・ホームズ」シリーズも原作を大きく逸脱していたけど、予備知識なしの人が取り残されるようなことはなかったと思う。しかもダウニーJrのホームズは、あれはあれで「あり」だから。

 「闇」の作家と呼ばれたポーの描く神秘的な闇の恐怖も、深夜にランタン(あるいはむき出しのロウソク)の灯りだけに頼って活動する主人公たちの捜査で表現したつもりなんでしょうか。それも見事に怖くないんですよね。
 ポーの定番とも言える生きたままの(早すぎる)埋葬も描かれてはいるのだが、見せ方どうでしょう。あれが怖いのは元から閉所恐怖症の人かな。土葬文化のアメリカ人は怖がるんだろうか。もうちょいやり方あったな。

 ポーが前から好きな人は「ずいぶんぞんざいに扱ってくれたな」と思うし、予備知識のない人には「なんだか途中意味がよくわかんないところがいっぱい」となるんじゃないかな。

 結末もあまりにポー自身にまつわる薀蓄にこだわりすぎて、こじんまりしすぎ。

 むしろポーの短編、「お前が犯人だ」のプロットでもそのまま使ったらどうなんだ、と思いましたよ(それこそ私の薀蓄か)。

 ヒロイン役のアリス・イヴは今をときめく女優なのか、とても魅力的だ。映画を観るべきかどうか悩んでる人にはそこだけは推せる。ただ登場場面はそんなにないけど。
 主演ジョン・キューザックも立ち居振る舞いが窮屈そうでもったいない。

 一方、「リンカーン」のほうは「つべこべ言わずに観ろ!」というつくり。リンカーンに関する史実をいやになるほど知っているアメリカ人でも「なるほどね」と頷けるようにうまく利用しているそうで(本気で怒っている人ももちろん多いそうだが)、吸血鬼譚という荒唐無稽な話のつくりを邪魔しない。むしろ立身出世前のリンカーンの生活ぶりや家族関係は史実を逆手にとって物語の起承転結にばっちり役立てているところもある。

 敵役ヴァンパイアの表現は・・・、まあもう誰もがヴァンパイアものには飽き飽きしてますからねえ。きっとあんなもんでしょ。奴隷商が吸血鬼であるという露骨なアナロジーに眼をつぶることができれば問題なし。天草四郎が実は魔界とコンタクトしていた、みたいに考えればいいんじゃないでしょうか。

 南北戦争、ゲティスバーグの戦いのくだりでは、ヴァンパイアが劣勢な南軍を加勢するというわけのわからない展開となり、さすがに南軍びいきは怒るだろうなあと思いましたが、今となっては奴隷制を正面きって弁護できる人など(アメリカ人では特に)いるはずもないんでいいのか。 

 リンカーン本人が登場するラストシーンも非常におしゃれで(ネタばれになるから書かないけど)、私は気に入った。あれはうまい。歴史を知らん人にとっては、あれじゃ何にもわからないのもいい。そのくらいは知っとけ、です。

 その後のエピソードもいい。マリン・ワン(大統領専用ヘリ)が登場することで現代のホワイトハウスに時代が移ったことが示されるシーン。
 「ふふっ」と思わず笑ってしまうような素敵な仕掛けがあります。まあ、悪趣味だといえばそれまでだが。 

 ということで、意外にも当初期待しなかった「リンカーン」のほうが高評価でございました。

 ただ、両方の映画ともエンディングであんまし大したことのない大音響のディストーション系ロックをBGMに用いるのはなんでなんだろう。最近の流行だろうか。若者に媚びているのだろうか。あれは正直いらないな。

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コメント

お疲れ様です。ふ~む、そうだったんですかぁ。
少々妄想や捏造が含まれていたとしても、ポーという作家にドーンとぶつかる、向き合うような姿勢を作品から感じられなかったんでしょうか。
まさか、若くして亡くなったからデータが足りないのでこういう映画になっちゃった、じゃないですよねぇ。
それじゃ、表現手段としての映画って意味ないし。
ちょっと見栄えのいい映像づくりの成果が映画であっては欲しくないよなぁ。

今夜、TVで「三銃士」やってまして、冒頭部分くらいは見ました。
場面はイタリアだったのですが、アサシンクリード2のような雰囲気と仕掛け。
水中から現れた銃士はDAのローグ風で、二刀流風に背負ったものをシャキーンと抜くと、これがヴァリックのビアンカ風のボウだったり。
もう映画なのかゲームなのか、ようわから~ん。(笑)
監督がバイオハザードの人らしく、ミラ・ジョボビッチも胸をちょ~~強調して登場。
バイオ風ワイヤーアクションを何度も披露しております。
大昔のリメイク版では、ミラの役をフェイ・ダナウェイがやってたけど、時代の流れを感じますね。

 若くして(40歳で)ボストンで死ぬまでのデータは、実は映画は詳細にリファーし活用してます。なんかしっくりこないのは活用の仕方ですねえ。

 時代背景・舞台でいうと「ポー」のほうは1849年マサチューセッツ州ボストン。
 「リンカーン」のほうはだいたい半生を描いているので、夫人と出会う1839年イリノイ州スプリングフィールドから、あのゲディスバーグの演説1863年までが中心。
 時代は少しかぶっているのですが、(予算の関係か)「リンカーン」のほうが(少なくともわれわれが信じる)当時のアメリカの風景を満喫できるようです。

 たぶん「ポー」のほうは史実どおりにボストンという大都市を舞台にしちゃったのが誤算だと思います。整備された石畳を往来する馬車、新聞社、豪華な舞踏会、大劇場。パリを舞台に活躍したデュパンのイメージが強すぎて、ポーの代名詞ともいえる「鴉」からイメージされるアメリカの湿地帯とか、米大陸独特の植生に囲まれた印象深い別荘地とか、枯れ木の林の中に孤立した古い邸宅とか、そういう疎外感みたいなものが感じられないんですね。
 近代都市ボストンにはカタコーム(カタコンベ、地下墓所)がないので、下水道で代用しちゃってるのもいまいち残念なんですよね。
 同じくポー本人が登場する、コッポラ監督の撮った映画"Twixt"(ヴァル・キルマー主演)、評判よくなかったけど、やっぱり機会を作って観てみます。

 
 先ほどの「三銃士」は私も横目で観ていましたが、途中でほかのことをはじめて興味を失っちゃった。いったい映画になったのは何作目でしょうね。
 "The Three Musketeers"とか"d'Artagnan"という題名の映画だけでも英語サイトimdbで20くらい出てきますね。そんなもんじゃないでしょうと思って、Athosというキャラクターで調べるとやはり50近く出る。英語圏で把握しているものだけでこれだから、本国仏語で英語になっていないもの、それ以外の言語版のものを加えたら、優に100を超えそうですね? 舞台とかTVまで入れたらもっとだ。
 フェイ・ダナウェイがミレディ役のやつを調べると、オリヴァー・リードがAthos役の1973年版。なんとラクウェル・ウェルチまで出ていますね(Constance de Bonancieux役)。
 オリヴァー・リードは「三銃士」を何度かやってる。残念ながら観たとしても記憶はないです。

 私は、なぜかチャーリー・シーンがAramis、キーファー・サザーランドAthos役だったものを覚えていますね。どれかな・・・、1993年版だ。d'Artagnanはクリス・オドネルで、Porthosはオリヴァー・プラットという方。
 あとは三銃士(プラスワン)ではなく「鉄仮面」のほうが主人公の、誰だ・・・、あ、レオ様か!
 1998年のデカプリオ主演の"The Man in the Iron Mask"。これはたしかジョン・マルコビッチが・・・、そうですねAthos役。
 別に傑作だから覚えているのではなく、ここら辺が私がまじめに映画を観ていた時代なんでしょう。

 
 そんなにリメイクしてなにが面白いんだろうって、あの話は確かに面白いんですよね。
 いつまでも「忠臣蔵」やってるわれわれだって人のことは言えない。

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